この世界の片隅に

 うちの息子は映画をよく観ている。

いい映画があると繰り返し観る。

 

逆に私はスクリーンや画面の前に

2〜3時間じっとしていることがじつは苦手。

同じ映画を繰り返し観ることも少ない。

だからあまり一緒に観たりはしない。

 

でも、「この世界の片隅に」。

これは絶対、観たほうがいいよ!!!

と熱心に勧められたので観ることにした。

 

圧倒されて涙も出なかった。

こんなすばらしい作品があることを

知らなかったことを深く恥じたくらい。

ほらね、だから言ったでしょ、と息子。

 

うーむ。

この映画が最初に上映されたのは

2016年、長いバージョンが2019年。

 

言い訳になるけど、その頃はイギリスの

ホメオパシーの学校の課題と試験に

四苦八苦していた頃だ。

小説も映画も封印していた時期で

すっかり見逃していた。

 

* * *

 

舞台は第2次世界大戦中の広島県呉市、

主人公のすずの日常を描いた作品。

 

反戦を強く訴えているわけではない。

だけど、とても丁寧に当時の人々の生活を

描いていて、日本人の優しさや強さ、

しなやかさにじわんとくる場面が

散りばめられている。

 

日本人の素朴な美点を

まるで花束にしたような。

 

だからこそ、最後の方ですずが

嗚咽するシーンは戦争に傷ついた

日本人の深いところに残っている記憶に

大きな共鳴を起こす。

 

* * *

 

ドイツの児童文学家作家である

ミヒャエル・エンデ(1929-1995)が

対談本のなかで芸術作品とホメオパシーに

ついて語っている有名な場面がある。

 

「ギリシャ悲劇でも、

シェークスピア劇でも、

舞台上では恐ろしいことや

犯罪的なことが行われます。

でも、それは現実の犯罪ではなく、

芸術というフォルムに移しかえられたもの。

それが逆に、観客の中に正反対の力を

呼び覚まし、かえって健康にしてくれる。」

 

残虐なことを作品として見せられることで

逆に、そんなことのない世界を望む

「健全さ」を呼び起こす、

それが芸術の力でもある。

 

戯曲、映画、音楽。

そういうものに人を癒す力があることを

ホメオパシーの作用に例えているのだ。

 

レメディを使ったことがない人には

「???」だと思うが

エンデはドイツで活躍した作家。

ドイツ発祥のホメオパシーのユニークな

癒しの仕組みをわかっていたのだろう。

 

この映画も史実を元に作られているとはいえ

「映画」という作品ににすることによって

観た人のなかにある種の力を呼び起こす。

 

こんなささやかな幸せを一瞬で破壊する

理不尽な戦争に対して二度とごめん!!!

という真っ当な自覚。それから

日本人として決して失いたくないスピリット。

それらをはっきりと呼び覚ましてくれる。

 

日本人の集合魂を丸ごと癒す

偉大なレメディのような映画だった。